自然観察会×スキンケアセミナー in 井の頭公園
- 開催日時:2017年11月3日(金・祝日)
No.006 株式会社ロック・フィールド
今回HUGでご紹介するのは、野菜をたっぷり使ったサラダやコロッケなどのお惣菜を製造販売する株式会社ロック・フィールドさんです。サラダの「RF1」(アール・エフ・ワン)を中心に、コロッケの「神戸コロッケ」、和惣菜の「いとはん」、アジアン惣菜の「融合」など6ブランドの店舗を全国に320店舗展開しています。デパ地下や駅ビル・駅ナカなどに出店しているので、ご存知の方も多いかと思います。同社の新鮮でおいしい商品の提供の裏側にはさまざまな工夫や環境への配慮がありました。
©ROCK FIELD
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同社には3つの工場がありますが、サラダやコロッケをメインにつくっているのが静岡県磐田市にある静岡ファクトリーです。ここでは、1日あたりサラダ15~17万食、コロッケ5~6万食を製造し、全国の店舗に配送しています。
のどかな田園風景に調和した美しいこの工場は、水と緑に囲まれ、「ファクトリーパーク」と名付けられています。
工場では、野菜の洗浄などに1日1000トンの水が排水されますが、この排水は微生物を使った排水処理設備により浄化されます。さらに浄化処理をされた水のうち4分の1は、工場内を流れる水路(ビオトープ)に流されます。この排水はアサザ、マコモ、アシをはじめとした40~45種の水草や、メダカなどの動植物の力よってさらに浄化され、河川に戻されます。
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ビオトープには、野鳥や野生動物たちも訪れ、豊かな自然をつくり出しています。そして、工場の一部に見えるのが3基の風車。自然環境を想う象徴であり、また実際に1基100kwの発電容量をもち、風車でつくられた電力は排水処理設備を動かすエネルギーとして使われています。
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静岡ファクトリーでは、野菜の端材をブイヨンなどに利用し、使えないものは細かくカットし、飼料や堆肥として利用するなど、2008年から廃棄物ゼロ(ゼロ・エミッション)を達成しています。
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この他、ファクトリーパークには、ハーブガーデンや柿園などもあり、それらは従業員の手で手入れをされています。緑と水に囲まれた循環型の工場は、2010年に「緑化優良工場等経済産業大臣賞」を受賞しました。
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ロック・フィールドが提供する製品のアイテムは常時300商品以上。RF1といえば、色とりどりのサラダが印象的なように、これらのお惣菜の素材のメインはなんといってもお野菜です。店舗数が最も多い「RF1」でも、主力となるサラダは売上の約4割を占めます。
同社で扱ういくつかの代表的な野菜の、味や鮮度、環境に対するこだわりを紹介しましょう。
〔鮮度がサラダの味を決めるレタス〕
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レタスを年間で安定的に仕入れるために、山梨や岩手、静岡、茨城などいくつかの契約農家さんから旬の時期を見極めながら産地をリレーして仕入れます。収穫されたレタスはその日のうちに冷蔵トラックで静岡ファクトリーに運ばれます。工場に運ばれると、まず人の手で汚れた外葉や根を落とします。
次に、葉をばらしてやさしい水流で洗います。実はここにもこだわりがあります。以前は高い水圧で洗っていたのですが、野菜に負荷をかけるため柔らかな水流で洗う方法に変更。これにより野菜の鮮度が落ちにくくなったとのこと。そして、人の目と手で、傷みがないか虫がいないか、一枚ずつチェックしていきます。
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このあと、鮮度を保持するため一定の温度管理のもと専用の袋に詰めて次の日には店頭に商品として並びます。収穫から店頭に並ぶまで、野菜本来のおいしさをより引き立て、鮮度のよい状態を保つ工夫が随所にこらされています。
〔産地の土壌から工程までこだわったジャガイモ〕
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サラダにもコロッケの材料にもなるジャガイモは、同社の中でも使用頻度の高い野菜です。その使用量は1日で4トンから4.5トンになるほど。
男爵いもは、長年契約農家さんから仕入れています。北海道北見市端野町の契約農家さんはもう25年以上のおつきあい。おいしいジャガイモをつくるためにさまざま工夫を協力して行っています。
土の豊かさが味に直結するジャガイモのために、なるべく農薬は最低限に抑え育てます。そして一般的に機械で収穫する際に使われることの多い、葉や茎を枯らす薬剤を使わずに、チョッパーで刈り取ってジャガイモを掘り出します。人手と時間はかかりますが、こうすることでより土壌を豊かに保つことができます。
加工にも同社ならではの取り組みがあります。ジャガイモは機械で丸ごと水洗いをした後、手作業でひとつひとつ芽を取り除きます。静岡ファクトリー竣工以前は外部に委託していましたが、納品過程で水に漬かっている時間が長く、でんぷん質が流れ出してしまうことから、自社での工程に変更。これによりサラダもコロッケもおいしさと鮮度がアップする結果になりました。
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大量の野菜を加工するため、働く人に負担のかかる部分はなるべく機械化し、必要な部分は人の手を残す「機械と手作業の融合」が工程を効率化し、おいしさの価値をつくり出しています。
〔香りを残した泥付きゴボウ〕
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ゴボウやジャガイモは、泥付きのまま工場に到着します。泥付きゴボウは、ヤスリのついたローラーで洗います。これも産地や製品によって洗い方を変え、香りをなるべく残しカット。畑で採れた状態を保つように加工して店頭に届けられます。生産から製造、販売まで1社で行う“一気通貫”のプロセスが、安定した品質と鮮度を保ちます。
<次郎柿はファクトリーパークの成長の印>
静岡ファクトリーの敷地の一角に次郎柿が植えられた柿園があります。竣工当時の従業員数240名にちなみ、240本の苗木を植えたことが始まりです。25年以上にわたって従業員の手で、剪定や芝刈りなど丁寧に手入れされ見事な柿がなるようになりました。この次郎柿は、「秋の便り」として毎年10月末から11月頭にかけて収穫され、ひとつひとつピカピカに磨かれて、取引先などに箱詰めして贈られます。今や500名の大所帯となった静岡ファクトリー。そして、売上高500億円を超えるようになった同企業の成長の歩みが次郎柿に込められています。
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静岡ファクトリーを訪れた人は、ガラス張りの回廊を通り、緑を眺めながら工場に入ります。この斬新な建築デザインは、数多くの著名建築を手がける安藤忠雄氏によるものですが、安藤氏はこの工場を、船をイメージして設計したそうです。そして、その考え方によると、従業員はクルー。安全でおいしいお惣菜をつくるために、クルーである従業員が協力して働きやすい環境が重視されています。
そのひとつが小さなお子さんのいる従業員のための「風車の丘保育室」。ファクトリーの敷地内にあるので、お母さん方も安心して預けられます。ここでは食にかかわる企業の保育室だけあって食育に力を入れています。近隣の農家さんに子どもたちがつくった案山子を贈ると、農家さんが新米を届けてくれたりします。保育室設立10周年記念に設置したかまどでその新米を炊いていただきます。食を通じての地域との温かな交流が盛んです。この保育施設があることで、従業員募集もスムーズだそう。これまで250名以上の子どもたちがここから巣立ちました。働くお母さんにとって一番うれしい、応援になる仕組みですね。
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そして、もちろん、従業員の方の健康のために社員用レストランは自社で製造された野菜メニューが並びます。お野菜をたっぷり食べられるサラダバーとバランスを考えたメニューが人気。自社で販売する商品をつくる人たちが食べる。シンプルですが最も厳しい目とフィードバックが期待できる方法です。このレストランの場所は、工場内で最も景観のよい場所に設置されているそうです。誇りをもって快適に働くことのできる環境、これが美味しいお惣菜をつくる一番大きな力になっているのかもしれません。
いかがだったでしょうか。1日に300アイテムが並ぶ多様な商品をつくり出すロック・フィールドの製造現場には、産地から工場までさまざまな工夫、物語がありました。次に商品を食べる際には、少しだけそんな背景も思い出してみると、また違う味わいになるかもしれません。
<お話を伺った方々>
株式会社 ロック・フィールド 静岡ファクトリー 総務採用教育グループ グループ長
岩井 浩明さん
株式会社 ロック・フィールド 秘書室 広報グループ
弓野 千恵さん
取材・文
室橋織江
箕輪弥生